ボランティアグループ「コソガイ」が運営する「鎌倉くらしと子育てガイド」の連載記事や、皆様から寄せられた体験談、コラム、エッセイのブログです。

鎌倉くらしと子育てガイド

第9回 自立支援医療(精神通院医療)

手帳がない発達障害者も利用できる「自立支援医療制度」について、申請方法など。

成人後に障害の診断を受けた「あーるさん」。
このシリーズでは、あーるさんのお母さんが、大人の発達障害・知的障害で「利用できる支援」にたどり着くまでの体験やその時に調べたことを紹介します。

自立支援医療(精神通院医療)とは

あーるが診断後に最初に受けられるようになった支援が【自立支援医療】です。

精神の病気で通院する時、医療費の自己負担を減らしてくれる制度です。原則1割負担になり、世帯所得や障害の程度に応じて月額上限があり、超えた分は公費でまかなわれます。

この制度における【世帯】とは、『同じ健康保険に加入している家族』で、住民票や障害福祉サービスの世帯とは異なります。同居の家族でも、健康保険が別なら別世帯です。

障害者総合支援法に基づいており、制度としては全国共通ですが、手続きは自治体毎に多少の違いがあるようです。受給者証の発行などは県が行っていて、申請窓口は鎌倉市障害福祉課です。

なお鎌倉市では、障害基礎年金の受給や中度以上の手帳がある場合、所得制限付きで医療費が無料になる【鎌倉市障害者医療費助成制度】があります。

そちらの対象になる人は医療費無料ですから、自立支援医療を利用する必要はありません。
ただ、精神通院の時に自立支援で2割分を国と県が負担すれば、医療費助成制度の負担を減らせるので、鎌倉市はできれば併用して欲しいみたいです。

【鎌倉市障害者医療費助成制度】については別の記事でまた説明します。

制度を利用できる人

精神障害により通院治療を続ける必要があると医師が判断した人。

障害者手帳の有無は問いません。
手帳が取れない程度でも、ほとんどの精神障害は対象になります。

うつ病など、高額な治療を長期に続ける必要がある人は【重度かつ継続】として、通常と別の月額上限があってさらに負担が軽減されます。

発達障害でも『継続的に治療や服薬が必要』なら対象で、症状と治療方針によっては【重度かつ継続】の扱いになります。

知的障害だけの場合は治療で治るものではないので、他の精神症状がなければ対象外です。

令和6年4月以降は所得制限が付く予定です。詳しくは県のHPに文書があります。
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/11515/poster.pdf

メリット

  • 精神の通院医療費、薬代がかなり安くなる
  • 障害者手帳がなくても利用できる
  • 診断が下りたらすぐに手続きを始められる
  • 申請が受理された日からすぐ利用できる
  • 受給者証は、障害福祉サービスを受ける時、障害の証明として使える

デメリット

  • 診断書が高額で作成に時間が掛かる
  • 発達障害の検査費用(診断が下りる前)には使えない
  • 精神以外の医療費や文書料には使えない
  • 指定した医療機関・薬局でしか使えない
  • 更新のお知らせが来ない
  • 1年ごとに更新手続き、2年ごとに診断書の提出が必要

医療機関について

この制度は、申請した【指定自立支援医療機関】でしか利用できません。病院は1ヶ所のみ、その処方箋を持って行く薬局は2ヶ所まで選べます。

利用したい医療機関が指定されているかどうかは、県のHPで確認できます。

診断書について

通院している【指定自立支援医療機関】で、主治医に【自立支援医療診断書(精神通院医療用)】を書いてもらいます。

  • A3サイズの神奈川県指定書式(県HPからダウンロード可能)
  • 文書料5,000円程度(病院により異なります)

【精神障害者保健福祉手帳】の診断書に自立支援医療の項目が含まれているので、手帳と同時申請する場合は、手帳用の診断書1通で済みます。

障害年金を受給している場合、手帳の診断書は不要ですが、自立支援医療用の診断書は必要です。

申請する前に必ず診断書の内容を確認しましょう。封がしてあっても開けて大丈夫です。間違いがあったら医師に修正をお願いします。

受給者証受け取りまでの流れ

自立支援医療受給者証

受付窓口は市役所の【障害福祉課】です。電話して郵送手続きも可能です。

あーるの場合は手帳と同時申請でしたが、単独で申請しても手順や期間はほぼ同じです。診断書の作成は約1ヶ月、申請から受け取りまでは約2ヶ月でした。

  1. 市役所に「自立支援医療を利用したい」と申し出る。
    申請方法の説明書、複写式の診断書用紙をもらう。
  2. 病院で診断書を書いてもらう。
  3. 必要書類を持って市役所に行き、申請を行う。
    【自立支援医療費支給認定申請書】と【世帯状況届及び同意書】に記入する。
  4. 受給者証が届くまでは、申請書の控(水色の複写紙)を医療機関で受付の時に提示。
    いったん3割負担の金額を支払うと、後日2割分が医療機関から返金される。
  5. 書類が県に送られて認定の手続きが行われる。
  6. 【自立支援医療受給者証】が自宅に届く。
    医療機関で受付の時に受給者証を提示すれば、医療費が1割負担になる。

有効期限と更新手続き

受給者証の有効期限は1年間です。更新のお知らせはなく、有効期限の3ヶ月前になったら忘れずに手続きする必要があります。

期限前に更新申請したのに、新しい受給者証が間に合わず期限が切れてしまったら、新規の時と同様に申請書の控を受給者証代わりに使えます。

診断書は原則2年に1回の提出です。次回更新時に診断書が必要かどうかは、受給者証の裏に書いてあります。有効期限を1ヶ月以上過ぎて再認定となると、『不要』と書いてあっても診断書が必要です。

次回は11/22(水)に公開予定です。精神障害者手帳についての話になります。

投稿者:あーる母

コソガイより

この記事の内容は、障害者の親である「あーる母さん」の個人的な経験に基づいたものです。社会福祉士の資格を持つスタッフのほか、複数の福祉関係者が確認を行っています。

受けられるサービス、手続きなどは人により異なったり、制度が変更になっている可能性があります。ご利用の際は、必ず関係機関や専門家による正確な情報をご確認くださいますようお願いいたします。

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