ボランティアグループ「コソガイ」が運営する「鎌倉くらしと子育てガイド」の連載記事や、皆様から寄せられた体験談、コラム、エッセイのブログです。

鎌倉くらしと子育てガイド

第10回 精神障害者保健福祉手帳

発達障害でも取得できる「精神障害者保健福祉手帳」について、申請方法など。

成人後に障害の診断を受けた「あーるさん」。
このシリーズでは、あーるさんのお母さんが、大人の発達障害・知的障害で「利用できる支援」にたどり着くまでの体験やその時に調べたことを紹介します。

精神障害者保健福祉手帳とは

精神障害者の証明書となる手帳です。略して【精神障害者手帳】や【精神の手帳】とも呼ばれます。手帳の表紙には【障害者手帳】とだけ書いてあります。

精神保健福祉法に基づいており、制度としては全国共通ですが、手続きは自治体毎に多少の違いがあるようです。手帳の発行や審査は県が行っていて、申請窓口は鎌倉市障害福祉課です。

あーるは障害者枠で就職したかったので、診断後急いで手帳を取得しました。しかし、その後訓練に通ってしばらく就職活動はできなくなり、そんなに急ぐ必要もなかったです。

障害福祉サービスなどの支援は手帳がなくても受けられるし、手帳で割引になるレジャー施設などは大人になると滅多に行かないし、うちの場合、手帳自体の使い道は思ったより少なかったです。

でも税金が安くなるのと、2級以上の場合は【鎌倉市障害者医療費助成制度】で医療費が無料になるのは、大きなメリットでした。

【鎌倉市障害者医療費助成制度】については別の記事でまた説明します。

手帳を取得できる人

精神障害(発達障害、てんかんを含む)の診断があり、日常生活や社会生活への制約がある人。

障害の程度に条件があります。精神の障害で【障害年金】を受給している人は、申請すれば同じ等級の手帳が取得可能です。

知的障害だけの場合は【療育手帳】になり、精神の手帳は取れません。
知的障害を伴う発達障害では、両方の手帳を取得可能です。

メリット

  • 税金の控除が受けられる
  • 障害者雇用の対象になる
  • 文化施設の入場料などが割引になる
  • 障害福祉サービスを受ける時、障害の証明として使える
  • 等級が中度以上の場合は医療費助成制度がある
  • 診断書で【自立支援医療】が同時申請できる

手帳のサービスは別の回で詳しく説明します。

デメリット

  • 初診から6ヶ月以上経たないと申請できない
  • 診断書が高額で作成に時間が掛かる
  • 審査があり、手続きしても取得できるかどうか数ヶ月わからない
  • 更新のお知らせが来ない
  • 2年ごとに更新が必要で、再審査に落ちることがある
  • 更新のたびに診断書または障害年金の証明が必要
  • 療育手帳と異なり、バスの割引がない

等級判定

医師の診断書のみの書類審査です。【神奈川県精神保健福祉センター】が審査します。

1級(重度)、2級(中度)、3級(軽度)があり、判定基準は厚労省が公開しています。

精神の手帳は、過去の状態も考慮される障害年金や療育手帳と違って、現時点の状態で審査されます。
発達障害の場合、『どんな症状があるか』と『生活上の困難の度合い』を示す、診断書の書き方で等級が決まります

そもそも手帳が取れない程度の状態だと医師が診断書を書いてくれないことが多く、年金に比べると落ちる可能性は低いそうですが、確実ではありません。等級も結果が出るまでわかりません。

診断書について

初診から6ヶ月過ぎないと診断書が作成できません。
以前、別の病院に同じ障害による症状で通院していたら、前の病院の初診日で計算します。
前の病院の初診日が不明な場合は、診断書を作成する医療機関の初診日で計算します。

別の病院での治療は問診で確認されるだけで、年金のような初診日の証明は不要です。最初は体調不良で内科に行ったとか診断名が違っても、医師が同じ障害と判断すれば、そちらを初診として『○年○月頃』と大まかな日付でもOKです。

現在通院している精神科などで、主治医に【診断書(精神障害者保健福祉手帳用)】を書いてもらいます。あーるの病院では複写式の用紙を市役所でもらってくる必要がありました。

  • A3サイズの神奈川県指定書式(県HPからダウンロード可能)
  • 文書料5,000円程度(病院により異なります)

この診断書1通で、精神科の通院医療費が安くなる【自立支援医療】も同時申請できます。

申請する前に必ず診断書の内容を確認して、コピーを取っておきましょう。封がしてあっても開けて大丈夫です。間違いがあったら医師に修正をお願いします。

  • 診察の時に医師に伝えた【生育歴】と【現在の困りごと】が反映されているか
  • 初診日は診断書の日付より6ヶ月以上前になっているか

診断書のコピーは、審査に落ちて再申請する時や、更新でまた診断書を書いてもらう時の確認に使います。『これまでの経緯や現在の状態と医師の所見』が書かれた資料として、他の支援を受ける時にも役立ちます。

手帳受け取りまでの流れ

市役所の窓口は【障害福祉課】です。電話して郵送手続きも可能です。

あーるの場合、診断書の作成は約1ヶ月、交付申請から受け取りまでは約3ヶ月でした。

  1. 市役所に「精神障害者手帳を取得したい」と申し出る。
    申請方法の説明書き、複写式の診断書用紙をもらう。
  2. 病院で診断書を書いてもらう。
    ※障害年金を受給している場合
    診断書の代わりに年金証書を提示、または【マイナポータル】で年金情報を連携しておく。
  3. 準備ができたら市役所で交付申請を行う。
    写真と必要書類を持って行き【精神障害者手帳交付申請書】に記入する。
  4. 書類が県に送られて審査される。
  5. 手帳が発行されると、【交付通知書】と【受領証】が自宅に届く。
    等級や有効期限などの詳細は受領証に書いてある。
  6. 必要書類を持って市役所に行き、手帳を受け取る。
    手帳で受けられるサービスの説明がある。

手帳の形式

交付申請の時、従来の紙形式かカード形式か選べます。

紙の手帳は提出した写真がそのまま使われ、カード形式では白黒印刷になります。
市のHPには書いてありませんが、スナップや集合写真の切り抜きは不可でした。

精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳カード

有効期限と更新手続き

【精神障害者保健福祉手帳】の有効期限は2年間です。
更新のお知らせはなく、有効期限の3ヶ月前になったら忘れずに手続きする必要があります。

更新では毎回診断書の提出が必要です。(障害年金受給者を除く)
診断書の作成は時間が掛かるので、早めに病院を予約しておきましょう。

新しい手帳が届く前に期限が切れてしまうと、その間はサービスを受けられないことがあります。

次回は11/29(水)に公開予定です。療育手帳についての話になります。

投稿者:あーる母

コソガイより

この記事の内容は、障害者の親である「あーる母さん」の個人的な経験に基づいたものです。社会福祉士の資格を持つスタッフのほか、複数の福祉関係者が確認を行っています。

受けられるサービス、手続きなどは人により異なったり、制度が変更になっている可能性があります。ご利用の際は、必ず関係機関や専門家による正確な情報をご確認くださいますようお願いいたします。

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