ボランティアグループ「コソガイ」が運営する「鎌倉くらしと子育てガイド」の連載記事や、皆様から寄せられた体験談、コラム、エッセイのブログです。

鎌倉くらしと子育てガイド

第1回 グレーゾーンから障害者に

生きづらさを抱えた人が、成人してから発達障害の診断を受け、障害者手帳を取得した、という話を、最近しばしば耳にするようになりました。

あーるさんは、幼少期から発達障害を疑われながらも診断がつかず、成人後に「障害がある」という診断を受けました。このシリーズでは、あーるさんのお母さんに、大人の発達障害・知的障害のこと、利用できる支援について紹介していただきます。

成人後に診断された方だけではなく、発達が気になるお子さんを持つ保護者の方にも参考になる情報があります。ぜひご覧ください。

ごあいさつ

はじめまして。あーる母と申します。うちの子(仮名:あーる)は20歳を過ぎてから、【自閉スペクトラム症】と【知的障害】があると診断されました。

子どもの頃から気になる部分はありましたが、病院に行っても「障害というほどではない」と言われ、ずっと【グレーゾーン】の状態で、学校でも普通級に通いました。それが成人後の受診で変わり、【障害者】となったのです。

障害の診断後は手帳や年金の申請、就労支援サービスなど、手続きすることが山ほどあり、とてもややこしくて迷いました。

制度のHPやパンフレットは一般的な内容なので、特に大人の発達障害や知的障害の場合、『一つ一つ問い合わせてみないとわからないこと』が非常に多かったです。しかも、実際に手続きを進めたら『話が違う』こともありました。窓口の人も間違えるくらい複雑なのです。

ここでは私が制度について調べたこと、経験した中で気付いたこと、お勧めの手続き方法など、鎌倉地域限定で書いていきたいと思います。本人の了解は得ています。誰かのお役に立てれば幸いです。

グレーゾーンって?

発達障害の【グレーゾーン】というのは、障害があるかないかのどっち付かずを表す俗称です。『発達障害の傾向がある』とも言います。知的障害の場合には、【境界域】や【知的ボーダー】と呼ぶことが多いようです。

グレーゾーン

いろんな意味合いがごっちゃになっていて、【グレーゾーン】という言葉自体があいまいだったりします。

  • 周りは気付いて困っているけど、本人の自覚がなくて、受診していない。
  • 本人も気付いているけど、あまり困ってなかったり行きづらくて、受診していない。
  • 医師は障害だと診断しているが、本人や家族には、あいまいにしか伝わっていない。

一般的には『障害を疑って受診したが、診断基準に達しないので診断名が付かなかった』状態を示すことが多いようです。あーるもずっとこれでした。

昔に比べて診断されやすい

一生グレーゾーンのままだと思っていたあーるを再受診させたのは、知人から「最近は発達障害の診断が取りやすくなったらしいよ」「診断がつけば、就労支援などの公的・福祉的なサポートもあるらしい」と聞いたことがきっかけです。

調べてみると2010年頃から法律が整備されてきて、国の方針が明確になり、それまで無視されがちだった成人発達障害者への対応が進んだようです。うつなどの二次障害や知的障害を伴わない『発達障害だけ』で障害者手帳が取れるようになったのは、この頃からです。

2013年には診断基準が改定され、境目の曖昧な【スペクトラム(連続体)】という概念が広がってきました。さらに発達障害への啓蒙が進んだこともあり、症状が軽度でも見つかりやすく診断されやすくなっているようです。

医師

障害者となって

私は、あーるに発達の遅れや偏りがあることには気付いていましたが、障害とまでは言えないグレーゾーンだと思って育ててきました。小さい頃はひどい偏食や大きな音でパニックになるなど大変でも、経験を積んで成長すれば個性の範囲内として生きていけるのでは、と期待していました。

実際に小中高と学年が進むにつれて本人の出来ることも着実に増え、学校生活への適応は良くなっていきました。学校側の配慮も大きかったと思います。

しかし、社会に出てみると壁に直面しました。学生の頃と違い、社会人となると周囲と比較され、結果を出さないと認められません。就職できずアルバイトも難しく、生活面でも未だ家族のサポートが欠かせない状況で、自立までの道のりは長いことを、本人も親も実感しました。

『障害がある』と診断された時、親としては我が子が【障害者】となって複雑な心境でした。思い描いていた普通の未来は来ないと突きつけられたわけで…。ただ一番大きかったのは、『これで支援が受けられる』とほっとする気持ちでした。

なお、本人は拍子抜けするほどあっさりと受け入れていました。他人の目を意識しないという障害特性もあるせいか、【障害者】という立場に抵抗はなかったようです。

投稿者:あーる母

コソガイより

この記事の内容は、障害者の親である「あーる母さん」の個人的な経験に基づいたものです。社会福祉士の資格を持つスタッフのほか、複数の福祉関係者が確認を行っています。

受けられるサービス、手続きなどは人により異なったり、制度が変更になっている可能性があります。ご利用の際は、必ず関係機関や専門家による正確な情報をご確認くださいますようお願いいたします。

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