「お十夜」と聞いて、「十五夜」となんだか近いものを感じ、
お月見と関係があるのかと思い込みましたが、それは勘違い。
でも秋の夜長、たくさんの屋台で埋めつくされる境内の上に、
ぽっかりうかぶお月様は、とても風情があります。
材木座にある光明寺の「十夜法要」は、毎年10月12~15日にかけて、
盛大におこなわれます。500年以上つづく伝統行事です。
現在では全国の浄土宗寺院でおこなわれている「十夜法要」は、
もともとはこの光明寺からはじまったものだそうです。
12日の献茶、13・14日には雅楽、稚児礼讃舞、双盤念仏、練行列など、
様々な行事がおこなわれますが、多くのひとのおたのしみは、
13・14日の夜におこなわれる夜店と植木市でしょう。
たこ焼きや焼きそば、綿菓子などのおなじみの屋台の他に、
くじや射的、金魚すくいなどアトラクションもたくさん。
テーブルとイスの並んだ居酒屋状態の焼き鳥屋さんやおでん屋さんで、
くつろぐ大人たち。鉄砲やヨーヨーなど手にしたばかりのおもちゃで、
さっそく遊びはじめるこどもたち。
食べ物や玩具の他にも、金物やカゴなどの生活用具、乾物や七味を売るお店も。
のぞいて見てまわるだけで、色鮮やかでにぎやかで、わくわくします。
桜の季節の観桜会、蓮の季節の観蓮会につづいて、
お十夜の際にも普段は閉じられている山門に上がることができます。
あいにくこの日到着した18時過ぎには、
もう山門拝観の時間を過ぎていましたが、
整然と屋台の並ぶ祭りの風景と、材木座海岸を山門から見下ろしたら、
さぞ絶景であろうと思います。
屋台をひやかすだけでなく、お祭りに来たからには、
きちんとお参りをしなくてはいけません。
本堂から白い紐がのび、参道の途中に立てられた柱に渡されています。
これが「善の綱」。柱の前には行列ができていて、
順番に柱から下がった紐をつかんでお参りをします。
紐のもう一方は本堂の阿弥陀如来につながっています。
戦国の世に後土御門天皇は、戦火に追われ困窮する人々に心を痛め、
一日も早く安穏に暮らせる日がくるようにと、
光明寺に十夜法要を許しました。
現在は毎年10月12日から15日までの4日間ですが、
その昔は十日十夜念仏を唱えると、極楽浄土で1000年修行するのに
勝ると言われたそうです。
そんな説明はウチノコにはわからないでしょうが、
とりあえず柱の前の列に並び、お参りをしました。
昼夜を通し本堂で行われる法要には、
信徒さんが団体バスを仕立てて集まるそうですが、
多くのひとは夜店のにぎわいをたのしみに来ているようです。
昔はお十夜の屋台でしか買えないものも多かったそうで、
近所の人はお十夜の夜店をたのしみに待っていたそう。
現在では夜店で買い物をしないと困るというわけではありませんが、
やはりご近所のひとは、お十夜の日に夜更けまで飲むことを
たのしみにしているようです。
こどもたちはもちろんお酒を飲むわけではないけれど、
そんなお祭りの熱気が伝わっていて、なんだかみんな興奮気味。
少しあいたスペースに集まって、ただ走ったり、くるくる回ったり。
キャーキャー騒いでとてもたのしそう。
それを見ている大人も、なんだかにこにこしてしまう。
特別な夜。こんなふうにみんな笑顔で、わくわくして過ごした夜が、
信仰とは離れているようだけど、
ずっしりと重い伝統を軽やかに受け継いでいることが素敵だと思います。
by 瀬戸なおよ
<DATA>
光明寺 十夜法要
2008年10月12日~15日
2008年10月13日・14日 夜店
光明寺(鎌倉市材木座6-17-19)
拝観料無料
>>お参りへ
<こづれ豆知識>
屋台の数も多ければひともかなり多いので、
迷子などにならないように、お気をつけください。