ボランティアグループ「コソガイ」が運営する「鎌倉くらしと子育てガイド」の連載記事や、皆様から寄せられた体験談、コラム、エッセイのブログです。

鎌倉くらしと子育てガイド

第11回 療育手帳

知的障害の「療育手帳」について、18歳以降での申請方法など。

成人後に障害の診断を受けた「あーるさん」。
このシリーズでは、あーるさんのお母さんが、大人の発達障害・知的障害で「利用できる支援」にたどり着くまでの体験やその時に調べたことを紹介します。

療育手帳とは

知的障害者の証明書となる手帳です。

身体や精神の手帳と異なり根拠となる法律がなく、自治体毎にルールを定めているため、判定基準や発達障害者への対応などは自治体によってバラバラです。

通常は子どもの頃に取得するもので、18歳を超えると手続きがかなり大変になります。
18歳以上の判定や手帳の発行などは、神奈川県の【総合療育相談センター】が行っています。申請窓口は鎌倉市障害福祉課です。

あーるは子どもの頃に医師から『障害ではない』と言われていたため、対象外だと思っていましたが、成人後の診断では『知的障害がある』と言われたので、そこで初めて取得を検討しました。

その際、病院や市役所では次のように言われました。
『精神障害者手帳とは異なり、療育手帳の取得は福祉の問題で、医療は無関係です』
でも実際に手続きを進めていくと、判定の審査には、主治医の診断も十分考慮されているように感じました。

18歳以上での取得については情報が少なく、関係者でもよく知らないことがあるようです。そこでいろいろと調べたり、実際に体験してわかったことをまとめてお伝えします。

手帳を取得できる人

18歳未満で知的な障害が現れ、日常生活や社会生活に支障が出ている人。
神奈川県では、自閉症の診断があれば境界知能でも療育手帳を取れる可能性があります。

知的障害は医療で治療するものではないので、過去に受診歴がない場合も多いですが、生育歴や学業成績で幼少期からの障害であると証明できれば、18歳以上でも新規に取得可能です。
親が高齢になって、40代、50代以上で取る人もそれなりにいるようです。

子どもの頃に不支給になった人も、再判定で取得できる可能性があります。
再判定の場合はそこまで大変ではないようなので、福祉の支援が必要なら諦めずに相談してみてはいかがでしょうか。

メリット

  • 税金の控除が受けられる
  • 障害者雇用の対象になる
  • 公共交通機関の割引がある
  • 文化施設の入場料などが割引になる
  • 障害福祉サービスを受ける時、障害の証明として使える
  • 等級が中度以上の場合は医療費助成制度がある
  • 18歳以上では更新がなく、一度取得すれば一生使える

手帳のサービスは別の回で詳しく説明します。

デメリット

  • 審査があり、手続きしても取得できるかどうか長期間わからない
  • 幼少期からの障害を証明する多くの資料が必要
  • 親子で面談や検査を受けるため、手間ひまが掛かる

等級について

療育手帳の等級は、自治体によって区分や判定基準が異なります。

神奈川県では、A1(最重度)、A2(重度)、B1(中度)、B2(軽度)の4区分、
B2はIQ51〜75程度、自閉症があればIQ91程度まで、と他県に比べて取りやすいようです。

判定基準はIQだけでなく生活能力も考慮されます
特に18歳以上の場合は、『仕事の能力』『自立できるか』が重視されるようです。

判定の審査は、面談、提出資料、検査、医師の診察など、総合的に行われます。

18歳以上で決まった等級は一生そのままです。
判定結果に不服申立てもできますが、同じセンターでの審査なので滅多に変更はないと思います。

県外に引っ越すと、変更になる可能性もあります。

鎌倉市での面談

18歳以上の場合は、県の判定の前に【鎌倉市障害福祉課】で親子面談があります。

  • 幼少期から知的な問題があったことの確認
  • なぜ今になって療育手帳を取りたいのか
  • 現在の生活の様子を本人に聞き取り調査
  • 今後の手続きとスケジュールの説明

提出書類・資料

調査票

市での面談前に自宅に送られてくる簡単なアンケートです。出生時の異常、幼児期の様子、特別支援教育を受けたかなどを記入して、返送します。

生育歴などをまとめたもの

第2回の記事で書いた【生育歴】【現在の困りごと】があると、面談や調査票の補足に役立ちます。

学校の通知表

小学校から全ての通知表・成績表をコピーします。評価の点数だけでなく、先生のコメント部分も重要です。学力がわかるテストの解答などもあれば追加します。

知能検査・発達検査の結果

今までに検査を受けたことがあれば、結果のコピーを提出します。

診断書・医学的意見書

精神や身体の手帳と異なり医師の診断書は必須ではありませんが、できればあった方がいいです。

更に客観的資料として医師の意見書を求められることがあります。専用書式の用紙が渡されるので、病院に持って行って書いてもらいます。

知的障害の判定

【総合療育相談センター】で行われる【現状・総合判定】は、親子で一日がかりの検査です。
【鎌倉市障害福祉課】の担当者も同席します。

午前
本人の身体計測・尿検査、知能検査、職能検査。親の面談、適応能力検査。

休憩時間
食堂や売店はないので昼食は持参します。車の人は外に出ても構いません。

午後
親子同席で医師による診察。親に検査での様子を説明。

【現状・総合判定】の結果は1-2ヶ月後の会議に掛けられ、そこで最終的に判断されます。

手帳受け取りまでの流れ

市役所の窓口は【障害福祉課】です。申請や受け取りは郵送も可能です。日中に市役所から電話で連絡が来ることが多いので、留守電に気をつけましょう。

あーるの場合、最初の申し出から判定結果が出るまで約5ヶ月、交付申請から受け取りまでは約2ヶ月半でした。

  1. 市役所に「療育手帳を取得したい」と申し出る。
  2. 自宅に送られてきた調査票に回答。
    面談日程が書いてあるので、それまでに通知表などの資料を集めておく。
  3. 指定日に【鎌倉市障害福祉課】で親子面談を受ける。
    集めていた資料を提出する。
  4. 面談や調査の結果、資料などが市から県に送られて書類審査される。
    足りないものがあると、市の担当者から電話連絡があるのでその都度対応する。
  5. 判定の日程が決まったら市の担当者から電話連絡がある。
  6. 指定日に【総合療育相談センター】で判定を受ける。
  7. 判定結果が出たら、市の担当者から電話連絡がある。
    手帳の等級、必要な手続きなど。
  8. 市役所で交付申請を行う。
    写真とマイナンバー書類を持って行き、【療育手帳交付申請書】に記入する。
  9. 手帳が発行されると、【交付通知書】が自宅に送られてくる。
  10. 必要書類を持って市役所に行き、手帳を受け取る。
    手帳で受けられるサービスの説明がある。

手帳の形式

交付申請の時、従来の紙形式かカード形式か選べます。

紙の手帳は提出した写真がそのまま使われ、カード形式では白黒印刷になります。
市のHPには書いてありませんが、スナップや集合写真の切り抜きは不可でした。

保護者の住所、氏名欄が必要ない人は空欄にできます。

療育手帳
療育手帳カード

次回は12/6(水)に公開予定です。障害者手帳のサービスについての話になります。

投稿者:あーる母

コソガイより

この記事の内容は、障害者の親である「あーる母さん」の個人的な経験に基づいたものです。社会福祉士の資格を持つスタッフのほか、複数の福祉関係者が確認を行っています。

受けられるサービス、手続きなどは人により異なったり、制度が変更になっている可能性があります。ご利用の際は、必ず関係機関や専門家による正確な情報をご確認くださいますようお願いいたします。

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