複雑な「障害年金」について、前半は主に制度や用語の解説です。
成人後に障害の診断を受けた「あーるさん」。
このシリーズでは、あーるさんのお母さんが、大人の発達障害・知的障害で「利用できる支援」にたどり着くまでの体験やその時に調べたことを紹介します。
障害年金とは
あーるが訓練に通うとしばらくは就職できないので、今後の生活費が心配で【障害年金】を検討し始めました。先輩保護者の方に話を伺うと、医師が協力してくれて書類をきちんと用意できれば、素人でも申請できることがわかりました。
専門用語が多くて理解するまで大変でしたが、あちこちで相談すると共に、徹底的に調べて準備した結果、あーるは無事に受給できました。やってみてわかったことが沢山ありますので、2回に分けてお伝えしていきます。
【障害年金】は、所定の障害状態になった場合に、現役世代でも受給できる公的年金です。
障害で働くのが困難な人の生活費を援助してもらえます。
金額や詳しい条件などは、日本年金機構のHPを見てください。
2種類の障害年金
初診日が20歳前や国民年金だった人は【障害基礎年金】、
初診日が厚生年金だった人は【障害厚生年金】の対象です。
【障害基礎年金】には1級と2級しかありません。3級程度は対象外です。
【障害厚生年金】には1級、2級、3級があり、更に程度が軽い障害手当金(一時金)もあります。
初診日が厚生年金で、障害が1級・2級の人は【障害基礎年金】+【障害厚生年金】がもらえます。
追加サービス(条件付き)
【障害基礎年金】を受給中に前年の所得が一定以下の人は【障害年金生活者支援給付金】も追加で上乗せしてもらえます。
【障害基礎年金】を受給中、または中度以上の障害者手帳を持っていて、本人と家族の前年の所得が一定以下の人は、【鎌倉市障害者医療費助成制度】で健康保険の医療費が無料になります。
障害年金を受給できる人
病気やケガにより生活や仕事に制約がある人。
障害の程度、年金保険料の納付状況などに条件があります。
子どもの頃からの障害でも、年金をもらえるのは20歳以上になってからです。
メリット
デメリット
等級判定
医師の診断書などによる書類審査のみです。
東京にある【日本年金機構障害年金センター】でまとめて審査されます。
精神の障害での判定基準は、厚労省がガイドラインを公開しています。障害の状態だけでなく、就労状況や生活環境も合わせて検討されます。
『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』の策定及び実施について |報道発表資料|厚生労働省
あーるは、日常生活の多くに親の手助けが必要で、就職できず就労移行支援を利用して無収入が続いていて、【障害基礎年金】2級に該当しました。
有期認定と永久認定
障害年金には、更新が必要な【有期認定】と、更新のない【永久認定】があります。
発達障害や知的障害は一生続く障害ですが状態が変わる可能性もあるので、基本的には1〜5年の【有期認定】で、何年になるかはケースバイケースです。
更新は誕生月で、次回が何年後かは受給するまでわかりません。
安定して働ける状態が続けば、更新で支給が停止します。
初診日について
【初診日】は障害による症状で最初に受診した日です。この日が不明だと請求できません。
以前『因果関係がある症状』で別の病院に通院していたら、診断名が違っても前の病院で最初に受診した日が初診日です。前の病院に【受診状況等証明書】を書いてもらって、初診日を証明する必要があります。廃院になっていたりカルテがなかったら別の証拠が必要です。
なお、原則として知的障害があると【出生日】が初診日となり、初診日証明は必要ありません。
知的な遅れのない発達障害や、ごく軽度の知的障害では、最初に受診した日が初診日になります。
その場合も療育手帳があれば生まれつきの知的障害と認められ、出生日が初診日になるようです。
詳しくは、年金の窓口や社労士などに相談して確認した方がいいと思います。
障害認定日と請求の種類
【障害認定日】は原則として初診日の1年6ヶ月後です。この日の状況で請求方法が変わります。
認定日による請求
【障害認定日】の時点で所定の障害状態だった場合の請求方法です。
【障害認定日】の翌月からの年金が、過去の分も含めて支給されます。
何年経っても請求できますが、5年で時効になりそれ以前の分はもらえません。
事後重症による請求
次のような場合は【事後重症】で請求します。
【年金請求日】の翌月からの支給になり、過去の分はもらえません。
20歳前傷病
【初診日】が20歳前で年金制度に加入する前からの障害では、保険料を納付してなくても【障害基礎年金】がもらえますが、所得制限が付いて年収が上がると減額や支給停止になります。
【障害認定日】は20歳の誕生日前日、または初診日の1年6ヶ月後のどちらか遅い方になります。
子どもの頃に受診してその後も生活上の困難があるなら、20歳の誕生日前に受診しておきましょう。【障害認定日】の診断書で請求が通れば、20歳からの年金がまとめてもらえます。
あーるのように認定日頃に受診していなかった場合は、【事後重症】で請求するしかありません。請求日より前の年金はもらえないので、所定の障害状態で就労できないならできるだけ早く請求しましょう。
知的障害がある人は、大人になってから初めて受診しても出生日が【初診日】になるため、必ず【20歳前傷病】の扱いです。
法定免除
国民年金1号被保険者が【障害基礎年金】を受給している間は、【法定免除】により国民年金保険料の支払いが不要です。免除期間中に既に払っていた分の保険料があれば還付されます。
免除期間は保険料を1/2だけ払った扱いになり、将来の【老齢基礎年金】はその分減額されます。
減額を防ぐには届出をして保険料を払います。払う期間は自由ですが、一度払うと決めた分は後から免除に戻せません。免除した後から追納はできます。
なお、障害年金は保険料を払っても増えません。【障害基礎年金】は2級で【老齢基礎年金】の満額と同じ金額と決まっています。
65歳を過ぎてからも【老齢基礎年金】の代わりに【障害基礎年金】をもらい続けるなら、免除にした方がいいです。
ただ、障害年金が【有期認定】だと将来どうなるかわかりません。親も亡くなり、老後に障害年金がもらえず、【老齢基礎年金】を受け取ることになった時、減額していると困るかもしれません。よく考えた上で払うか免除かを選びます。
我が家ではあーるの国民年金保険料を翌年の春まで前納しており、その分は還付を受けずに払込のままにして、老齢年金の減額を少しでも減らすことにしました。あーるが老後も障害年金をもらえた場合、払った分は無駄になってしまいますが、年金も万一に備える【保険】ですから仕方ないという考えです。
厚生年金には法定免除はありません。就職して厚生年金に加入したら、厚生年金保険料を支払う義務があります。
投稿者:あーる母
コソガイ追記:社労士による確認
年金制度は非常に複雑なため、専門家である地元の社労士の方にチェックをお願いしました。
社会保険労務士 石川勝己
〒247-0074 神奈川県鎌倉市城廻682-5
090-6306-4033
https://buzz.yokohama/
記事の内容に間違いはなく、「大変立派に出来ていて感心しました」とのことです。後半には追加でいただいたアドバイスも載せますので、そちらも合わせてお読みください。
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